気まぐれエッセィ

佐渡の元気をデザインする。プロデュース工房【ボッテガ・サド】
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538 正月の準備と「切り紙」
 小木・宿根木に昔の小学校を利用して作った「佐渡國小木民俗資料館」がある。目玉は別棟にある復元した千石船だが、本館の教室ごとに設けられた展示物は大量かつ多岐にわたる。その一角のこじんまりした処に、「切り紙」が展示してあるはずだ。これは僕の父が作ったものである。家では「切りすかし」と呼んでいたが、近所の人は「下げ紙」「はかま紙」「切りぬき」「垂れ紙」などと勝手に呼ぶ。正月に神棚を飾るためのもので、毎年、今頃になるとサラリーマンだった父が、夜の仕事としてコタツに入りながら作り、年末に家の前座敷をにわか店にして売った。僕と姉が売り子を引受け、売上げがお年玉になった。でも、もともとのこの「切り紙」作りは、新穂まちにある実母の実家「忠兵衛」がたぶん明治頃から、本業の「ちょうちん」の片手間に季節ものを手掛けたのだろう。だが、跡を継ぐものがなかったために、女婿にあたる父が面白半分にちょうちんとこの原紙を譲り受けたのだ。

 絵柄は縁起もの。商家が好んで買うのは「大福帳」や「招き猫」、農家なら「豊年万作」、年寄りのいる家なら「高砂」という定番があり、他にも「めで鯛」や「恵比寿・大黒」、「鶴亀」「日の出」などがあった。神棚の両脇の榊や松に飾り付けるのは、半紙の半分の大きさの紙にイカや扇子などを切り抜いて一端をつまんで持ち上げると全体が繋がる「松飾り」も作った。これらの絵柄は、少しずつ変更を加えられたものの、わが家なりの特徴があり、他の地域や新潟市内で売っているものとは違っていた。父の転勤に伴って新潟や村上にいる時にも同様のものを見かけたが、「こんな手抜きの図柄なんてダメだ」と子供らしいエバリ方をしたものだ。また、在郷の家では白紙のまま飾っていた。

 この「切り紙」が全国的であること、そして必ずしも正月でなく、神事全般に使われるものだと知ったのは、宮崎・高千穂の佐藤さんのところに遊びに行き、有名な「高千穂神楽(かぐら)」の博物館を見てだ。他にも近所の居酒屋に飾りとして貼られていたがこれはご愛敬。とにかく、こちらの方が本家筋だろう。さらに遡れば中国の「剪紙、刻紙」に行きつくはずだ。
下げ紙
 佐渡の郷土史家で、本間雅晴中将の御子息・本間雅彦氏はこう書いている。「普及したのは、歴史的にはさほど古くからのことではない。石井文海の『天保年間相川年中行事』に、それらしきものはみえないし、昭和十三年(一九三八)の『佐渡年中行事』(中山徳太郎・青木重孝著)では、柱松や注連縄に昆布やスルメといっしょに、扇型の切り紙を結ぶマツノハナの行事が、泉・河原田・多田・徳和にみられるにすぎない。しかし民俗学研究所の『綜合日本民俗語彙』(昭和三十年刊)の「ハカマガミ・袴紙」の項には、佐渡での行事として載せてある。その後『海府の研究』(両津郷土博物館・昭和六十一年)には「切り紙」として、ツルカメ・大黒・エビスなどの縁起ものを切り抜いた紙を買ってきて下げるとして、両津の秀方仙之助が切った二○種ほどの見本を掲げ、同氏は四○年前に小木で習った旨書いてある。さらにこのさげ紙は、高野山で始まって北前航路で運ばれたとも書いているので、一般化はないとしても一部の者には、かなり以前に伝えられていたとみてよいであろう。神棚に下げるようになる前には、前記した柱松にハリセンベイといって、麸状の型で起した薄いせんべいなどといっしょに、縁起ものを切り抜いた紙を下げる習俗が、昭和初期にはかなり見られたから、それからの移行ともいえる。」(相川町史編纂委員会編『佐渡相川郷土史事典』より)……主に文献に依拠した記述で食い足りなくて?と思う。でも、新穂の「切り紙」に関する記録がない以上、異議はいいにくい。

 うんちくはともかく、新穂流の「切り紙」は、僕が継がないのでもう終わり。誰かやってみる? 原紙と道具を譲るよ。
コメント
from: つちや   2008/12/13 10:14 AM
堀川さんへ。返事が遅れてすみません。「取材」といわれても……大したもんじゃないです。連絡先はホームページで公開しています。http://bottega-sado.com
from: 堀川   2008/12/04 11:55 AM
はじめまして。
私も、日本のモノツクリに興味を持ち、切り紙にとても興味があります。
一度、取材をさせていただきたいのですが、ご連絡方法など、教えていただけますでしょうか。
d-t-d.sky@orange.zero.jp
よろしくお願いいたします。 堀川
from: 千葉惣次   2008/11/25 8:16 PM
拝復 切り紙のお話拝読いたしました。小生5年かけて全国各地に伝承された切り紙を集めて倣作し、将来その成果を出版したいと計画しております。新穂流きり紙なんとか 
残せないでししょうか。1組だけでも切って頂けないでしょうか。ご無理なら制作道具譲って頂けないでしょうか。
             敬具

   土屋様
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